1.所得格差が拡大しているから
2.恋愛格差が拡大しているから
3.女性の社会進出が進んでいるから
4.若者が結婚を望まなくなったから
5.子供の養育費の負担が大きいから
6.仕事と子育てが両立できないから
などなど。
どれも直感的にはなるほど、思う。
しかし、一体何が少子化の主因なのかこれらをならべてもよく分からない。
そこで、ここでは少子化の原因をもう少し体系だてて考察してみることにする。
まず、少子化とは何か。
ここでは少子化を「成人に至る子供の数が少なくなること」と定義しよう。
今は具体的な数値は考えない。
例えば、「合計特殊出生率が○○な状態を少子化とする」・・・など。
と、すれば同時に以下の関係式が導かれる。
成人する子供の数
=結婚数×一夫婦当たりが生む子供の数×成人率
日本においては
結婚する→子供を産む→その子供が成人する
という過程を踏むから上式となる。
さらにこの式を詳細に詰めていこう。
およそ以下の様になるはずだ。
(0)成人する子供の数=(1)式×(2)式×(3)式
(1)結婚数=出会う機会×付き合う確率×付き合い続ける確率
(2)一夫婦当たりが生む子供の数
=(性交渉の回数×妊娠確率×出産を選択する確率×出産確率)×産みたい子供の数
(3)成人率
これらを一つ一つ検証していけば、少子化の原因に近づいていくことが可能だ。
(数回に分けて考察していく)
今回はこれら詳細な式をひとつひとつ検証することは避け
以下の式についてのみ検証を行う。
成人する子供の数
=結婚数×一夫婦当たりが生む子供の数×成人率
この式によれば成人する子供の数が減少する理由には
大きく3つあることになる。
仮説1.結婚数が減少した
仮説2.一夫婦辺りが生む子供の数が減少した
仮説3.成人に至る前に死亡する子どもが増加した
1つ1つ見ていこう。
まずは子供の数について
データは
0歳から19歳までの人口の推移を表わすと以下の様になる。
平成21年人口動態統計
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001066479
子供の数を0歳児のみに限定してみよう。
これをみてみると、1970年代から生まれてくる子供の数が
減少していることが見てとれる。
少子化の進展は1970年代以降起こってきたものと考えられる。
次に結婚数について。
データは
総務省 日本の統計 第2章人口・世帯
http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm
結婚数は1972年の1100千件をピークに、2009年には708千件にまで減少している。
婚姻率を見てみよう。
婚姻率(人口千対) | |
1947 | 12 |
1950 | 8.6 |
1955 | 8 |
1960 | 9.3 |
1965 | 9.7 |
1970 | 10 |
1975 | 8.5 |
1980 | 6.7 |
1985 | 6.1 |
1990 | 5.9 |
1995 | 6.4 |
2000 | 6.4 |
2005 | 5.7 |
2006 | 5.8 |
2007 | 5.7 |
2008 | 5.8 |
2009 | 5.6 |
1970年の10をピークに2009年には5.6まで減少しているのが
分かる。
特に1970年代から1980年代にかけての変化が激しい。
次に1人当たり夫婦が産む子供の数について。
これは平均的な夫婦がどれくらいの子供を生んでいるのかを
表わす完結出生児数を見ることにする。
データは
厚生労働省 出生動向基本調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/118-1a.html
完結出生児数 | |
1940y | 4.27 |
1952y | 3.5 |
1957y | 3.6 |
1962y | 2.83 |
1967y | 2.65 |
1972y | 2.2 |
1977y | 2.19 |
1982y | 2.23 |
1987y | 2.19 |
1992y | 2.21 |
1997y | 2.21 |
2002y | 2.23 |
2005y | 2.09 |
戦後に限定すると完結出生児数は1952年の3.5人から徐々に減少。
1970年代以降は概ね2人で推移している。
少子化が進展し始めた1970年代のピークは2.2である。
次に成人率について。
成人率を計算したかったが、統計上の誤差なのか
成人に至るまでに何らかの人口流入があったのか
計算結果がおかしなことになってしまったため、
簡単化のため乳児死亡率で近似することにする。
データは
平成21年人口動態統計
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001066474
乳児死亡率(出生千対) | |
1947 | 76.7 |
1948 | 61.7 |
1949 | 62.5 |
1950 | 60.1 |
1951 | 57.5 |
1952 | 49.4 |
1953 | 48.9 |
1954 | 44.6 |
1955 | 39.8 |
1956 | 40.6 |
1957 | 40 |
1958 | 34.5 |
1959 | 33.7 |
1960 | 30.7 |
1961 | 28.6 |
1962 | 26.4 |
1963 | 23.2 |
1964 | 20.4 |
1965 | 18.5 |
1966 | 19.3 |
1967 | 14.9 |
1968 | 15.3 |
1969 | 14.2 |
1970 | 13.1 |
1971 | 12.4 |
1972 | 11.7 |
1973 | 11.3 |
1974 | 10.8 |
1975 | 10 |
1976 | 9.3 |
1977 | 8.9 |
1978 | 8.4 |
1979 | 7.9 |
1980 | 7.5 |
1981 | 7.1 |
1982 | 6.6 |
1983 | 6.2 |
1984 | 6 |
1985 | 5.5 |
1986 | 5.2 |
1987 | 5 |
1988 | 4.8 |
1989 | 4.6 |
1990 | 4.6 |
1991 | 4.4 |
1992 | 4.5 |
1993 | 4.3 |
1994 | 4.2 |
1995 | 4.3 |
1996 | 3.8 |
1997 | 3.7 |
1998 | 3.6 |
1999 | 3.4 |
2000 | 3.2 |
2001 | 3.1 |
2002 | 3 |
2003 | 3 |
2004 | 2.8 |
2005 | 2.8 |
2006 | 2.6 |
2007 | 2.6 |
2008 | 2.6 |
2009 | 2.4 |
乳児死亡率は戦後大きく減少傾向にあるのが分かる。
それではこれらの増減を比較してみよう。
増減を求める上では、少子化が起こってきた1970年代の
それぞれのピーク時の値と2009年の値を用いて計算してた。
婚姻率 | 完結出生児数 | 乳児死亡率 | |
70年代ピーク時 | 10 | 2.2 | 13.1 |
2009年 | 5.6 | 2.09 | 2.4 |
変化率 | -0.44 | -0.052 | -4.45 |
これらの結果をそれぞれ仮説に当てはめてみよう。
仮説1.結婚数が減少した | 変化率-0.44 | 大幅減少 |
仮説2.一夫婦辺りが生む子供の数が減少した | 変化率-0.052 | やや減 |
仮説3.成人に至る前に死亡する子どもが増加した | 変化率-4.45 | 大幅減少 |
乳児死亡率は大きく減少していることから、仮説3はあてはまらない。
仮説1と仮説2はそれぞれ子供の数を減少させるが、
仮説1の方が仮説2よりも変化率が激しい。
従って、少子化の主因は「仮説1 結婚数が減少した」
となる。
以下、結論。
その1 少子化の主因は結婚率が減少したことである。
その2 特に1970年代から1980年代にかけての変化が大きい
(続)